無毛症の基礎知識

 

無毛症(むもうしょう:atrichia)は、毛髪が完全に欠如している状態を指しています。厳密には、生まれつき、又は生後早期のうちに毛髪を失ってしまう状態のことで、病型としては、主に先天性無毛症、先天性乏毛症、遺伝性症候群に伴う無毛症の3つがあります。

 

毛髪の欠如を意味する点では同じように見えるのが脱毛症ですが、脱毛症は発毛後の後天的症状を含む場合が多いため、実際にはやや異なっています。基本的には毛の先天的欠落の意味あいが強い傾向にあるようで、これは先天性乏毛症と並ぶ先天性脱毛症として、毛の完全な欠落を特徴していますが、症例の多くは常染色体劣性(常染色体上にある劣性遺伝子によって形質が発現する遺伝)の遺伝を示しています。

 

全身の毛髪が生まれた時から無い場合もありますが、その多くは、いったんは発毛して生まれた後に、生後1~6ヵ月の間に完全に毛髪が脱落し、それ以後は発育しない状態になります。

 

先天性乏毛症の方は、生まれた時には正常な毛髪が認められているのに、以後は徐々に脱毛が進んで、細い毛がまばらに生えているような状態になります。

 

遺伝性症候群については詳しくは後述しますが、ウェルナー症候群(Werner Syndrome)、ネザートン症候群(Netherton Syndrome)があります。